多読(Tadoku)で英語を伸ばす——Kaufmann流・実践ガイド
【中級者向け】ポリグロット Steve Kaufmann が語る多読(Tadoku)の実践法。日本発の読書学習メソッドをどう活用すべきか、extensive reading と intensive reading の使い分けまで解説します。
対象レベル: 中級 / 目安: TOEIC 500〜700, CEFR B1–B2
「多読(Tadoku)」という言葉を聞いたことはありますか?実はこれ、日本で生まれた言語学習メソッドで、世界中の語学マニアに注目されています。20以上の言語を習得したポリグロットであり、LingQ の創設者でもある Steve Kaufmann がこの動画で Tadoku について語っています。日本人英語学習者にとってこれほど親近感を持てる切り口はない——そう感じたら、ぜひ最後まで読んでみてください。
英語学習において「読む」という行為はどこか地味に見られがちですが、Kaufmann さんはその力を誰よりも実感してきた人物です。彼が Tadoku をどのように評価し、どんな補完を加えることを勧めているのか——日本発のメソッドを改めて見直すきっかけになるはずです。
Steve Kaufmann と多読の出会い
Steve Kaufmann さんはカナダ出身のポリグロット(多言語話者)で、英語・フランス語・日本語・中国語・スウェーデン語など20以上の言語を習得しています。オンライン語学学習プラットフォーム LingQ の創設者でもあり、YouTube やポッドキャストで学習法を発信し続けています。今回の動画では、reading(読書)の力と、日本発の多読メソッド Tadoku についての考察を語っています。
Tadoku とは何か——日本生まれの読書学習法
Tadoku(多読)は、日本の言語学者・教育者の Beniko Mason さんが関わって発展した、日本語版の extensive reading メソッドです。「大量の本を楽しみながら読む」ことで自然に語彙や文法を身につけるというアプローチです。Kaufmann さんはこの背景を動画の中で丁寧に説明しており、Beniko Mason さんを「日本の言語学者・教育者(Japanese linguist and pedagogue)」と紹介しています。
Tadoku の考え方の根底には、Stephen Krashen(スティーブン・クラッシェン)が提唱した extensive reading の理論があります。Krashen は「meaningful input(意味のあるインプット)」を大量に受け取ることで、自然な言語習得が起きると主張しました。Tadoku はその日本版ともいえます。また listening も含む場合は「多読多聴(Tadoku Tachou)」と呼ばれるとのことです。日本語を母語とする私たちにとって、英語学習で世界標準とされているこのメソッドが実は日本発祥だというのは、誇らしい事実ですね。
Tadoku には4つのゴールデンルールがあるとされており、その中には「辞書を引かない」「難しい単語はスキップする」「わからなくても読み続ける」といった方針が含まれています。これらのルールは「読書への抵抗を下げ、とにかくたくさん読む量を確保する」という哲学から生まれています。
Kaufmann が感じる Tadoku の可能性と限界
Kaufmann さんは Krashen の理論に深く共感しつつも、Tadoku のルールには一部異議を唱えています。
彼が特に指摘するのは「ゼロから始めて辞書なしで読む」という点です。動画の中で彼は、語彙のベースが少ない初心者にはこのアプローチは現実的ではないと述べています。知っている単語だけで読んでいては、語彙は増えない——そして語彙が増えなければ、読める素材のレベルがずっと低いままになってしまう、というのが彼の主張です。これは英語学習者にとって非常に納得感のある指摘ではないでしょうか。「やさしい英語だけを読み続けていたら、いつまで経っても英字新聞が読めない」という状況は、多くの学習者が経験していることです。
"expand your passive vocabulary"
語彙を広げるためには、自分の快適ゾーンの外に出て、少し難しい素材に挑戦することが大切だと Kaufmann さんは力説しています。この「受動的語彙(passive vocabulary)」を広げることこそが言語習得の鍵だと彼は考えています。これは extensive reading の「楽しく読む」精神と必ずしも矛盾しない。ただし「楽しい」は「簡単すぎる」とは違うのです。
一方で Kaufmann さんは Krashen の核心的なメッセージには強く同意しています。それは「learner が読書を楽しむことが最大の目標」という点です。文法中心の授業や、内容確認クイズのような deliberate activity(意図的な練習)は、むしろ学習者を読書から遠ざけると彼は考えています。楽しさを最優先にしながら、同時に語彙の境界線を少しずつ押し広げていく——これが Kaufmann 流の読書学習の本質です。
Intensive reading と Extensive reading の使い分け
Kaufmann さんが提唱するのは、intensive reading と extensive reading を状況に応じてブレンドするアプローチです。
初心者のうちは、同じ素材を繰り返し読んだり聴いたりする intensive reading が自然と中心になります。これは「varied exposure(多様な形での接触)」であり、語彙をしっかり定着させる段階です。Kaufmann さん自身も、新しい言語を始めるときは最初から intensive reading になると動画の中で語っています。語彙のベースができてきたら、辞書を活用しながら少し難しい素材に踏み込み、やがて楽しみながら広く読める extensive reading の割合を増やしていく、という流れです。
現代はインターネットのおかげで、この2つの境界線がかつてほど明確でなくなっています。オンライン辞書、テキスト読み上げ、語彙レビュー機能——こうしたツールを使えば、難しい素材でも learner autonomy(学習者の自律性)を保ちながら読み進められます。LingQ はまさにこの発想で設計されたプラットフォームです。日本人英語学習者にとってのヒントは、最初から「完全な多読」を目指さなくていいということ。まずは辞書を使いながら自分の好きなテーマの素材を読む——そこから始めれば十分です。
Key Phrases / 英語学習者へのポイント
このトークに登場する語句は、どれも英語学習の文脈で頻繁に使われる重要な用語です。それぞれの意味と使い方を確認しましょう。
"extensive reading"
Meaning: 語彙のほとんどを知っている素材を大量に読むことで、自然に言語を習得するアプローチ。日本語の「多読」がまさにこれに相当します。
In context: He started extensive reading to build his English vocabulary. At first, the books felt a little too easy. But over time, he noticed new words appearing naturally in his mind.
(彼は語彙を増やすために多読を始めた。最初は本が少し易しすぎると感じた。しかし次第に、自然に新しい単語が頭に浮かぶようになった。)
"comprehensible input"
Meaning: 理解可能なインプット。Krashen の提唱する概念で、現在のレベルより少しだけ難しい素材のことを指します。難しすぎず、易しすぎないちょうどいいレベルが語彙習得に最も効果的とされています。
In context: She always looked for comprehensible input when choosing reading material. The text was just challenging enough to keep her focused. She could understand most of it, but still encountered new words every page.
(彼女は読む素材を選ぶとき、いつも理解可能なインプットを探した。テキストは集中力を保てるほどちょうど難しかった。ほとんどは理解できたが、それでも毎ページ新しい単語に出会った。)
"learner autonomy"
Meaning: 学習者が自分自身の学習を管理し、自律的に進める力のこと。Kaufmann さんは動画の中でこの「学習者の自律性」を育てることの大切さを語っています。自分で素材を選び、自分のペースで進める力が、長期的な言語習得につながります。
In context: Building learner autonomy takes time but it is worth it. You start by choosing your own reading material. Gradually you become responsible for your own progress.
(学習者の自律性を育てるには時間がかかるが、それだけの価値がある。まず自分で読む素材を選ぶことから始める。やがて自分の成長に責任を持てるようになる。)
"passive vocabulary"
Meaning: 読んだり聞いたりすれば意味がわかる語彙のこと。積極的に使う active vocabulary(能動的語彙)とは区別されます。Kaufmann さんはこの受動的語彙を広げることこそが言語習得の鍵だと語っています。まずは「わかる単語」を増やすことが、のちの「使える単語」につながるというわけです。
In context: He had a large passive vocabulary but struggled to speak freely. Reading novels helped him recognize thousands of words. The challenge was now to activate them in real conversations.
(彼は広い受動的語彙を持っていたが、自由に話すのに苦労した。小説を読むことで何千もの単語を認識できるようになった。今の課題はそれを実際の会話で使えるようにすることだ。)
Today's Challenge
Read this short paragraph and think about your own reading habits.
Extensive reading works best when you choose material you genuinely enjoy. If you find a topic interesting, you will naturally read more. The key is not to always seek easy texts, but to find content that is challenging enough to grow your vocabulary while still being fun to read. Start with one article or short chapter today.
(多読は、本当に楽しめる素材を選んだときに最もよく機能します。興味のあるトピックを見つけると、自然ともっと読みたくなります。大切なのは常に簡単なテキストを求めることではなく、語彙を増やすのに十分な難しさがありながら、楽しく読み続けられる素材を見つけることです。今日はまず記事1本か、本の短い章1つから始めてみましょう。)
まとめと次のアクション
Tadoku は日本生まれの多読メソッドです。Kaufmann さんはその価値を認めつつ、語彙のベースがない段階では辞書やツールのサポートを組み合わせることを勧めています。読書を楽しむことが最優先——でも楽しさと易しさは別物。この2つを混同しがちな点こそ、多くの英語学習者がはまりやすい落とし穴です。
大切なのは「自分が本当に興味を持てるテーマ」の英語コンテンツを見つけること。趣味のブログでも、好きなスポーツの記事でも、料理レシピでも何でも構いません。最初は辞書を使いながら、少しずつ難しい素材に慣れていく——その積み重ねが、気づけば大きな語彙力になっています。今日から1ページでも読む習慣をつけてみてください。
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元動画は Steve Kaufmann のチャンネル でご覧いただけます。